夕暮れの校庭から、子どもたちの声が聞こえてくる。
ランドセルを背負って走る姿。
部活動で何度もボールを追いかける姿。
家に帰れば、宿題をして、スマートフォンやゲームに向かう時間もある。
子どもは元気で、よく動く。
だからこそ、
「腰が痛い」
と聞くと、少し意外に感じるかもしれません。
「成長期だからかな」
「運動しすぎたのかな」
「少し休めば治るだろう」
そう思うこともあるでしょう。
けれど、子どもの腰痛は、単なる「大人の腰痛の小さい版」ではありません。
成長期ならではの原因もあり、なかには一度きちんと診てもらったほうがよい腰痛もあります。
子どもの腰痛は、決して珍しくない
以前は、腰痛は大人に多いものと考えられがちでした。
しかし現在では、子どもや思春期の人にも腰痛は比較的よくみられることがわかっています。
米国放射線学会(ACR)の2024年のレビューでは、小児の腰痛の有病率は研究によって幅があるものの、近年の報告では30〜50%とされています。成長に伴って増え、スポーツ活動、長時間の座位、運動不足、体重など、さまざまな要因が関係すると考えられています。
原因として多いのは、筋肉の負担や使いすぎなど、比較的心配の少ないものです。
スポーツの練習量が増えた。
急に運動する機会が増えた。
長時間、机やゲームの前に座っている。
同じ姿勢が続いている。
そんな日々の積み重ねが、腰への負担になることがあります。
「成長痛だから」で済ませないほうがいい理由
子どもが腰を痛がると、
「今は体が大きくなっている時期だから」
と考えてしまうことがあります。
けれど、「成長しているから腰が痛い」と単純に片づけることはできません。
成長期には、骨や筋肉が変化していきます。
さらに、スポーツなどで腰を繰り返し反らす動作が多い場合には、腰椎分離症のような障害が起こることもあります。
特に、運動すると痛みが強くなる、同じ場所の痛みが繰り返される、休んでもなかなか改善しない、といった場合には注意が必要です。
一方で、子どもの腰痛には、感染症や炎症性の病気など、頻度は低くても見逃したくない原因が含まれることがあります。
だからこそ、
「子どもなのに腰が痛い」ということ自体を、不自然だと決めつけない。
そして、痛みが続くなら、その理由を確かめる。
それが大切なのです。
こんな腰痛には、少し注意を
子どもの腰痛で特に気をつけたいのは、痛みの強さだけではありません。
たとえば、
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夜中に痛みで目が覚める
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4週間以上、痛みが続いている
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発熱や体重減少などを伴う
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足のしびれや力が入りにくい感じがある
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痛みが足へ広がる
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歩き方がおかしい
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腰が明らかに曲がっている
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強い痛みが続いている
こうした症状がある場合は、医療機関での評価が勧められます。特に、神経症状や夜間痛、全身症状を伴う場合には、早めの診察が必要です。
また、転んだ、ぶつかった、強い衝撃を受けたなど、はっきりした外傷のあとに腰痛が出た場合も、自己判断で様子を見続けないほうがよいでしょう。
「どのくらい痛い?」だけでなく、
「いつから?」
「何をすると痛い?」
「運動するとどうなる?」
「夜は眠れている?」
「足にしびれはない?」
と聞いてみる。
子ども自身がうまく説明できなくても、普段と違う動きや表情を観察することも大切です。
腰を守ることは、動かないことではない
腰が痛いと、すぐに「安静にさせなくては」と考えるかもしれません。
もちろん、痛みを我慢して運動を続けることは避けたいものです。
一方で、原因や状態によっては、完全に動かないことが最善とは限りません。
筋肉の負担による腰痛などでは、状態に応じて活動量を調整しながら、運動やリハビリテーションを取り入れることがあります。
大切なのは、
「痛いけれど頑張る」でも、
「怖いから何もさせない」でもなく、
その子の状態に合った動き方を探すこと。
そのためにも、痛みが続く場合は整形外科などで相談してみましょう。
そして日常では、長時間同じ姿勢を続けないこと、運動量を急に増やしすぎないことなども意識できます。
スポーツを頑張っている子なら、「もっと練習しなさい」ではなく、
「今日は腰、どうだった?」
と聞いてみる。
その一言が、子どもにとっては大きな安心になることがあります。
子どもは、痛みがあっても遊びたい。
練習を休みたくない。
友達に遅れたくない。
大人に心配をかけたくない。
そんな気持ちから、痛みを小さく伝えていることもあります。
だから、腰痛を「弱さ」や「怠け」と結びつけないことも大切です。
春に芽を出した木が、夏を越えて、少しずつ幹を太くしていくように。
成長する体は、いつも同じ速さで変わっていくわけではありません。
その途中で、痛みという小さなサインを出すことがあります。
「子どもだから大丈夫」でも、
「腰痛だから怖い」でもない。
まずは、その痛みに耳を澄ませる。
いつから痛いのか。
どんなときに痛むのか。
いつもと何が違うのか。
その一つひとつを知ることが、子どもの体を守ることにつながります。
元気に走り回る背中の、その奥には、成長していく体があります。
痛みを見つけたときは、走ることを止めるのではなく、
もう一度、安心して走れる方法を一緒に探していく。
子どもの腰痛と向き合うというのは、そんなことなのかもしれません。