朝の支度をしているとき。
床に落ちたものを拾おうと、少しかがんだ。
部活動で体をひねった。
重い荷物を持ち上げた。
その瞬間、
「痛い……」
と、腰を押さえて動けなくなる。
大人なら「ぎっくり腰かな」と考える場面です。
でも、それが子どもだったらどうでしょう。
「子どもでも、ぎっくり腰になるの?」
そう思う人もいるかもしれません。
実際には、子どもにも急に強い腰痛が起こることはあります。ただし、子どもの腰痛をすべて「ぎっくり腰」と考えてしまうのは少し注意が必要です。
「ぎっくり腰」は病名ではない
一般に「ぎっくり腰」と呼ばれているものは、急に起こった腰の強い痛みを表す日常的な呼び方です。
医学的には、急性腰痛などとして扱われます。
筋肉や靭帯などに負担がかかって痛みが出ることもありますが、腰痛の原因は一つではありません。
子どもや思春期の場合も、運動による筋肉の負担、軽いけが、繰り返し腰に負荷がかかることなど、さまざまな可能性があります。
特にスポーツをしている子では、腰を反らす、ひねる動作を繰り返すことで、腰椎分離症などの障害が起こることもあります。小児・思春期の腰痛では、単なる筋肉痛だけでなく、こうした成長期特有の問題も考える必要があります。
だから、
「急に痛くなったから、ただのぎっくり腰」
と決めつけないことが大切です。
子どもは、痛みをうまく説明できないことがある
子どもが腰を痛がっているとき、
「どこが痛い?」
「いつから?」
「何をしたの?」
と聞いても、
「なんとなく」
「わからない」
「動くと痛い」
という答えしか返ってこないことがあります。
それでも構いません。
大切なのは、痛みの言葉だけではなく、いつもと違う様子を見ることです。
立ち上がるときに腰をかばっている。
靴下を履くのに苦労している。
走らなくなった。
部活動を休みたがる。
椅子から立つとき、いつもより時間がかかる。
子どもは、遊びたい気持ちや、練習を休みたくない気持ちから、痛みを我慢してしまうこともあります。
だからこそ、大人が「痛いと言っている」という事実を、そのまま受け止めることが大切です。
「動かさないほうがいい?」も、状態によって違う
突然腰が痛くなると、できるだけ動かさず、ずっと横になっていたほうがいいと思うかもしれません。
けれど、腰痛では、原因や症状に応じて適切に活動量を調整することが大切です。
強い痛みがあるときに、痛みを我慢してスポーツを続ける必要はありません。
一方で、症状が落ち着いてきた後まで必要以上に動かないことが、必ずしもよいとは限りません。
一般的な急性腰痛では、痛みを悪化させる動作を避けながら、可能な範囲で普段の活動に戻していくことが勧められています。
子どもの場合は、年齢や原因によって対応が異なります。
「休ませるべきか」
「いつ運動に戻れるか」
を自己判断で決めるより、痛みが強い、繰り返す、長引くといった場合には、整形外科などで相談するほうが安心です。
こんなときは、「ぎっくり腰」で片づけない
特に注意したいのは、腰痛に別の症状が重なっている場合です。
たとえば、
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痛みが何週間も続いている
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夜、痛みで目が覚める
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発熱がある
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足のしびれや力が入りにくい感じがある
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痛みが足まで広がる
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歩き方が明らかにおかしい
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強い衝撃や転倒のあとから痛みがある
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排尿や排便に変化がある
こうした場合は、早めの医療機関での評価が必要です。
子どもの腰痛では、4週間を超えて続く痛み、夜間痛、全身症状、神経症状などは、詳しく調べるべきサインとされています。
もちろん、これらの症状があるからといって、必ず重大な病気というわけではありません。
ただ、
「子どもだから、そのうち治る」
と決めつけずに、一度きちんと確認する。
その慎重さが大切なのです。
腰の痛みは、「弱さ」ではない
スポーツを頑張っている子ほど、
「休みたくない」
「みんなに迷惑をかけたくない」
「練習についていきたい」
という気持ちを抱えることがあります。
だから、
「これくらいで休むの?」
「運動不足なんじゃない?」
という言葉ではなく、
「今日はどんな動きで痛かった?」
と聞いてみる。
それだけでも、子どもは自分の体の変化を話しやすくなるかもしれません。
腰痛は、頑張りが足りない証拠ではありません。
体が「少し立ち止まって」と知らせていることもあります。
夕方のグラウンド。
いつもなら走り回っている子が、今日は静かにベンチに座っている。
そんな姿を見たら、焦って走らせるより、
「今日は少し休もうか」
と声をかけてみる。
子どもの体は、まだ成長の途中です。
骨も、筋肉も、動き方も、これから変わっていく。
だからこそ、突然の腰痛をただの「ぎっくり腰」と片づけるのではなく、その痛みが何を伝えようとしているのかを見てあげたいものです。
痛みが消えたら、また走ればいい。
でも、その前に。
痛みを我慢しなくてもいいと、子どもが思えること。
それもまた、元気に動き続けるための大切な土台なのかもしれません。