夕方になると、空が少しずつ薄い色に変わっていく。
一日中パソコンに向かっていた。
スマートフォンを見ながら食事をして、気づけば肩に力が入っていた。
仕事を終えたころには、頭の両側をぎゅっと押さえつけられているような感覚がある。
ズキズキするほどではない。
だから、今日もそのまま帰る。
「肩がこっているだけかな」
「少し休めば大丈夫だろう」
そう思っているうちに、同じような頭痛が何度も繰り返される。
そんなときに知っておきたいのが、「緊張型頭痛」という頭痛です。
緊張型頭痛は「気のせい」ではない
緊張型頭痛は、代表的な一次性頭痛の一つです。
一次性頭痛とは、ほかの病気が原因となって起こるのではなく、それ自体が一つの頭痛疾患として起こるものをいいます。
典型的な緊張型頭痛では、頭の両側に、脈打つというより「締めつける」「圧迫される」ような痛みが起こります。
痛みは軽度から中等度で、歩いたり階段を上ったりする程度の普段の身体活動によって、片頭痛のように悪化することは一般的ではありません。
吐き気や嘔吐は通常みられず、光や音が気になることがあっても、どちらも強く出るとは限りません。
そのため、
「痛いけれど、動けないほどではない」
という状態で過ごしている人もいます。
それが、緊張型頭痛のつらさの一つなのかもしれません。
「頑張っている身体」は、力が抜けない
緊張型頭痛という名前から、
「ストレスが原因なんだ」
と思われることがあります。
けれど、原因を一つに決めることはできません。
長時間のデスクワーク。
同じ姿勢。
首や肩まわりの筋肉への負担。
睡眠の乱れ。
精神的な緊張。
さまざまな要素が重なって、頭痛につながることがあります。
特に忙しい日は、身体が休んでいるつもりでも、肩だけがずっと仕事を続けているようなことがあります。
キーボードを打つ指。
画面を追う目。
前に出た頭。
無意識に上がった肩。
ひとつひとつは小さな変化でも、それが何時間も続けば、身体にとっては小さくありません。
そして、痛みがあるとさらに身体に力が入りやすくなる。
そんな循環が、頭痛を長引かせることもあります。
「肩こり」と「頭痛」を別々に考えなくていい
緊張型頭痛では、首や肩のこり、頭の周囲の圧痛などを伴うことがあります。
だから、
「頭が痛いから頭だけを何とかしよう」
と考えるより、
「今日は身体全体にどんな負担がかかっていたかな」
と振り返ることも大切です。
たとえば、仕事の途中で一度立ち上がる。
肩をゆっくり下げる。
画面から目を離す。
同じ姿勢を続けない。
机や椅子の高さを見直す。
睡眠時間を確保する。
どれも特別な方法ではありません。
けれど、身体に「ずっと力を入れ続けなくていい」と知らせる時間になります。
緊張型頭痛の治療では、痛みが起きたときの薬物療法だけでなく、生活上の工夫や運動、リラクゼーションなどの非薬物療法も選択肢になります。日本の頭痛診療ガイドラインでも、頭痛の頻度や生活への影響に応じて、急性期治療と予防療法を組み合わせることが示されています。 (jhsnet.net)
頭痛薬にも「使い方」がある
頭痛が起きたとき、市販の鎮痛薬を使うことがあります。
適切に使えば、痛みを和らげるための大切な選択肢です。
ただし、頭痛が頻繁になると、
「痛くなったら薬」
という習慣が繰り返され、薬を使う日が増えてしまうことがあります。
頭痛薬を頻繁に使用することで、かえって「薬剤の使用過多による頭痛」が生じることもあります。
そのため、頭痛が頻繁に起こる場合は、薬を増やして対応し続けるのではなく、医療機関で頭痛そのものを相談することが大切です。
「月に何日くらい頭痛があるのか」
「どのくらい続くのか」
「薬を何日使っているのか」
簡単に記録しておくだけでも、診察の手がかりになります。
「いつもの頭痛」に変化があったら
緊張型頭痛だと思っていても、すべての頭痛が緊張型頭痛とは限りません。
特に、突然起こったこれまでにない激しい頭痛や、意識の変化、手足の麻痺、ろれつが回らない、けいれん、視覚の異常などを伴う場合は、緊急の評価が必要になることがあります。
また、これまでと痛み方が明らかに違う、急に頻度が増えた、頭痛が続いて日常生活に支障が出ているという場合も、「いつものこと」と決めつけず、医療機関に相談しましょう。
頭痛は、身体から届く情報です。
痛みを我慢できることと、身体に負担がないことは、同じではありません。
夕方、窓の外が少し暗くなってきたら。
一度、肩を下ろしてみる。
深く息を吐いてみる。
今日、自分の身体にどれくらい力が入っていたかを思い出してみる。
緊張型頭痛と向き合うことは、痛みだけを消そうとすることではないのかもしれません。
「ずっと頑張っていた身体」に気づくこと。
そして、ほんの少し力を抜ける場所をつくること。
張りつめていた糸を、いきなり切るのではなく、少しずつゆるめていくように。
今日の頭痛をきっかけに、自分の身体との距離を、ほんの少し近づけてみてもいいのだと思います。