夜が深くなるころ。
家の中から生活の音が消えて、窓の外も静かになっているのに、突然、片側の目の奥をえぐられるような痛みがやってくる。
眠っていたのに、痛みで目が覚める。
じっとしていることさえつらく、部屋の中を歩き回ったり、何度も時計を見たりする。
「また来るのではないか」
そんな不安を抱えながら、夜を迎える人もいるかもしれません。
それが、群発頭痛です。
群発頭痛は、一般的な「頭痛」のイメージとは少し違います。
非常に強い痛みが、頭の片側、とくに目の周囲や目の奥、こめかみなどに起こります。発作は15分から180分ほど続き、1日に何度も繰り返すことがあります。
痛む側の目が赤くなったり、涙が出たり、鼻が詰まったりすることもあります。
そして特徴的なのが、痛みの最中に「じっとしていられない」こと。
横になって静かに耐えるというより、落ち着かず歩き回ってしまう人もいます。
「そんなに痛いなら、もっと大げさに見えるはず」
もし周囲にそう思われたことがあるなら、それもまた苦しさの一つかもしれません。
群発頭痛は、発作と発作の間には比較的普通に過ごせることがあります。
だからこそ、外からは分かりにくい。
仕事の日中はいつも通りに見えていても、夜になると激しい痛みに襲われる。
その繰り返しが続けば、身体だけでなく、心も少しずつ疲れていきます。
群発頭痛には、「群発期」と呼ばれる時期があります。
一定の期間に発作が集中し、その後、しばらく発作が起こらない時期が訪れることがあります。一方で、長期間にわたって寛解せず発作を繰り返す慢性群発頭痛もあります。
ここで知っておきたいのは、
「我慢するしかない頭痛」ではない
ということです。
群発頭痛では、発作が起きたときの治療と、発作を減らすための予防治療があります。
日本頭痛学会のガイドラインでは、急性期の治療として酸素吸入やスマトリプタンの皮下注射が推奨されています。群発頭痛では一般的な鎮痛薬が十分な効果を示しにくいため、自己判断で市販薬だけを繰り返すのではなく、頭痛を専門的に診療する医療機関に相談することが大切です。
また、群発期には予防治療が重要になることがあります。
「いつ痛みが来るのか」と身構える時間を、少しでも減らすためです。
そのためにも、発作が起きた時間、続いた長さ、痛む場所、目の充血や涙、鼻の症状などを記録しておくと、診察の際に役立つことがあります。
痛みの日記は、ただ苦しさを書き残すものではありません。
自分の身体が送っている小さな手紙を、あとから読み返すためのものでもあります。
そして、初めて経験する激しい頭痛や、これまでとは明らかに違う頭痛の場合には、「群発頭痛だろう」と決めつけないことも大切です。
頭痛には、ほかの病気が原因となって起こるものもあります。突然これまでにない激しい痛みが出た、意識や言葉に異常がある、手足の麻痺やしびれがあるなどの場合は、早急な医療機関での評価が必要です。
夜の静けさの中で、
「また始まるのではないか」
と時計を見る時間。
その痛みを経験したことのない人には、想像しにくいかもしれません。
けれど、群発頭痛は医学的に知られている病気であり、治療の方法もあります。
痛みを言葉にできない夜があってもいい。
ただ、「これほど痛いのは、自分が弱いからなのだ」と思わないでいてほしいのです。
暗い夜にも、朝が来るように。
群発頭痛について知ることは、痛みを我慢するためではなく、痛みと少し違う関係をつくるための一歩なのかもしれません。
ひとりで耐える夜から、治療につながる夜へ。
その道は、ちゃんとあります。