朝、パソコンを開く。
窓から差し込む光を横目に、メールを確認して、資料を作って、気づけば昼を過ぎている。
少し休もうと思っていたのに、スマートフォンの通知が届く。
画面を見る。
また画面を見る。
一日の終わりには、目が乾いて、まぶたが重い。
首や肩は固く、頭までぼんやりする。
「今日はちょっと疲れただけ」
そう思って眠れば、明日には戻る気がする。
けれど、その疲れが何日も続いているなら。
それは、身体から届いている小さなサインなのかもしれません。
「目の疲れ」だけではないVDT症候群
VDTとは、パソコンやタブレットなどのディスプレイを使って作業する機器のこと。
「VDT症候群」という言葉は、長時間のディスプレイ作業によって生じる、目や身体、心身のさまざまな不調を表す言葉として使われてきました。
現在は、厚生労働省のガイドラインでも「情報機器作業」という表現が使われています。
そこでは、目の疲れや乾き、見えにくさだけでなく、首や肩のこり、頭痛、背中や腰の痛み、腕や手指の痛み・しびれ、ストレスなども、自覚症状として挙げられています。
つまり、
「目が疲れたから、目だけの問題」
とは限らないのです。
画面を見るために少し前のめりになる。
同じ姿勢が長く続く。
キーボードを打ち続ける。
集中しているうちに、身体を動かすことを忘れる。
そんな一つひとつの積み重ねが、目や首、肩、腕などに負担をかけていきます。
画面を見ていると、なぜ目が疲れるのか
画面をじっと見ているとき、私たちは普段よりまばたきが少なくなることがあります。
そのため、目の表面が乾きやすくなり、乾燥感やゴロゴロする感じ、かすみ、目の痛みなどにつながることがあります。
長時間の近くを見る作業そのものも、目に負担をかけます。
そして、ここで少し覚えておきたいことがあります。
「パソコンやスマートフォンを見たから、目そのものが壊れてしまう」
と考える必要はありません。
長時間の画面使用による目の不快感はありますが、通常のコンピューター画面を見続けることが、永久的に視力を傷めることを示すものではありません。
だからこそ大切なのは、怖がることではなく、
「どうすれば身体への負担を減らせるだろう」
と考えることなのだと思います。
休むことは、仕事を止めることではない
忙しいと、
「休憩する時間なんてない」
と思ってしまうことがあります。
けれど、休憩は「何もしない時間」だけではありません。
画面から目を離して遠くを見る。
意識してまばたきをする。
一度立ち上がって身体を動かす。
肩の力を抜く。
姿勢を変える。
それだけでも、同じ姿勢と視線を続ける時間を減らせます。
厚生労働省のガイドラインでは、連続した情報機器作業が長時間にならないようにし、作業の合間に休止時間を設けることが示されています。また、画面は目からおおむね40cm以上の距離を確保し、画面の上端が目の高さと同じか、やや下になる位置が望ましいとされています。
椅子に深く座る。
足を床につける。
画面の位置を少し調整する。
明るさや反射を見直す。
こうした小さな工夫も、毎日積み重なれば違ってきます。
「疲れた」は、弱さではない
夕方の空が少しずつ薄暗くなるころ。
一日中働いた身体は、何も言わずに疲れを抱えています。
それなのに私たちは、
「これくらい普通」
「まだ頑張れる」
と、疲れを後回しにしてしまうことがあります。
けれど、目の疲れも、肩の重さも、手のしびれも。
身体が出している大切な情報です。
症状が続いて軽くなる気配がないときには、単なる疲労だと決めつけず、眼科や整形外科など、症状に応じた医療機関へ相談することも大切です。厚生労働省も、症状が継続する場合には、必要に応じて眼科的・筋骨格系の検査や専門医の受診につなげることを示しています。
毎日使う画面だからこそ。
「見ないようにする」より、
「上手に付き合う」ことを考えてみる。
画面を閉じたあと、窓の外を見る。
遠くの景色に目を向ける。
ゆっくり息を吐いて、肩を下ろす。
ほんの数分でもいい。
ずっと近くを見つめていた目に、遠くを見る時間を返してあげる。
それは、仕事をさぼることではありません。
明日も自分の身体と一緒に働いていくための、静かな準備なのです。